「暗雲」叶わなかった願い 4

私はパソコンのモニターの台風情報を確認しながら「Yさん。会館の日程的には問題はないんですけど、明後日には台風が来る可能性が高いですよ」と伝えました。

 

Yさんは即答で「そうですね・・・今、来てますよね」と少し不安気にお返事をされたので、私は「当社は台風でも会館は通常営業する予定なんで、それは問題ないのですが、もし、このままですと、明後日は明石海峡大橋が通行止めになる可能性もありうりますね」と率直に意見をお伝えしたのです。

 

Yさんは「はい。でも、通行止めになっても開通するのを待って行こうと思ってるんで、お願いします」と言われたので、私は「もちろん。私は全然構いませが」と返事をしました。

 

私とYさんはその後、安置方法のことなどをお話した後、「台風の様子を見て、葬儀の時間を決めましょう」と、具体的な日時を決めず、そのときは電話を切りました。

 

Yさんからは電話越しであっても、必ずプレシャスコーポレーションでマニちゃんのお見送りをするんだという強い意志のようなものを感じ取った私は、有難いと思う気持ち以上に台風のことが気がかりでありました。

 

気がかりと言うより心配だったのです。

 

Yさんは女性であり、あまり車の運転も慣れていないと言っておられました。

 

仮に通行止めにならなくとも、激しい風と雨の中、四国から鳴門海峡と明石海峡を渡った後、交通量の激しい阪神高速を通って来られることが心配であったのです。

 

そして、翌朝。

 

私はすぐにTVをつけて台風情報を見ました。

 

この日、台風16号は九州に上陸をし、早くも大きな被害をもたらしてることがニュースで流れていたのです。

 

進路も予想通り、明日の午後には九州を横断し、そのまま四国・近畿方面を直撃するとアナウンサーは伝えていました。

 

「厳しいな・・・」

 

そんな独り言をつぶやいた私は、ますます自分の不安が大きくなるのを感じていたのです。

 

その日の午前10時頃、私はYさんに電話をしました。

 

Yさんは、すぐに出られたので、私は「Yさん。このままだと、予報通り明日は台風が直撃しそうですね」と告げると、Yさんもテレビで台風情報を見ておられたようで「そうですね・・・」と元気なく返事をされたのです。

 

「あの・・・野村さんお聞きしたいことがあるんですけど、プレシャスさんは夜、何時まで葬儀できるんですか?」とYさんが尋ねられたので、私は「基本、24時間体制であります」と答えました。

 

Yさんは「今、家族とも相談してたんですが、たぶん台風が通過するまで移動は無理だろうから、夜にこっち(四国)を出ようかなって言うてたんです」と言われたのです。

 

私は「わかりました。当社は深夜でも対応できますので、そっちのほうが安全ですね」と返答しながら、ふと、あることが気になったのです。

 

それは、Yさんが口にされるまで、私はYさんのご家族の存在を忘れていたのですが、Yさんのご家族はペット葬儀のために大阪まで行くことを承知されているんだろうか?ということであります。

 

そんな疑問が頭を過った私は「あの、Yさん。ご家族は大阪まで行くことについては納得されているんですか?」と聞きました。

 

Yさんは「それはもちろん。ちゃんとプレシャスさんのことを説明しましたし、その上で私が『どうしてもこの会社で(葬儀を)してもらいたい』って言ったんで、理解もしてくれています」と力強く返答されたのです。

 

「そうですか。わかりました。では、夜もう一度お電話します。夜になれば、明日の状況もある程度わかると思うので、そのとき日時を決めましょう」

 

私はそう言って電話を切ったのです。

 

何気に窓から外を見ると、台風が接近してる前触れなのか、昼間なのに夕刻のような空色が広がっていました。

 

 

 

ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

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