悲しくとも温かな光景

ペットのお葬儀とご火葬をあげるため、車で葬儀場に向かうとき、ペットちゃんを、どのような状態で連れていってあげるかは、飼い主さんによっても違います。

 

もちろん、大型のペットちゃんの場合は、ある程度のスペースが必要なため、1BOXタイプ等に代表される、広い車の後方部に、毛布などに包んで載せて来られるのがほとんどなのですが、猫ちゃんや小型犬の場合は、少し、状況が変わってくるものであります。

 

まず、病院等でペットちゃんが亡くなった場合、病院側が紙製の棺を用意してくださることがあり、その棺に納められた状態のままで、葬儀屋に来られる飼い主さんもいますが、そのようにされる飼い主さんは、実はそれほど多くありません。

 

小型のペットちゃんを連れて葬儀屋に向かうとき、やはり、多いのはペットちゃんが日頃愛用していたベッドや布団に寝かした状態で、連れて来られる飼い主さんであります。

 

では、そのように愛用のベッドやクッションに寝かしたペットちゃんをどの席に置くのか?

 

助手席や後部座席かは、ペットちゃんによっても変わりますが、ほとんどの飼い主さんは、ペットちゃんが生前、車に乗る時にお気に入りだった座。いわばペットちゃんの特等席と呼べる席に寝かせて連れて来られるものであります。

 

しかし、生前、ペットちゃんのお気に入りの席は座席や荷台とは限りません。

車で移動するとき、ペットちゃんが一番のお気に入りの場所は飼い主さんの膝の上であることがあります。

 

特に犬ちゃんは車の中では飼い主さんの膝の上でないと落ち着かないような子もいます。

そのような場合、もちろん飼い主さんは、自分の膝の上に乗せて、葬儀場に来られるのです・・・

 

会館に飼い主さん家族の車が到着されたとき、我々はお出迎えをして、お車を誘導するのですが、ご家族の誰かがペットちゃんを膝の上に寝かされているようなときは、ドアを開け「私が抱かせていただきましょうか?」とお声をかけるようにしています。

 

このとき、ほとんどの飼い主さんは静かに膝の上で眠っているペットの顔を見つめておられるのですが、涙を流している人もいれば、微笑を浮かべたような表情でペットちゃんの顔や頭を優しく撫でておられるときもあります。

 

それは、悲しくとも、とても温かな光景であり、私は、ドアを開け、そんな飼い主さんを目にしたとき、思わず胸が詰まってしまい、何も言葉がかけられなくなってしまったこともありました。

そんな飼い主さんの中には、私がドアを開けたことにも気付かず、ただ、ペットちゃんの顔を見つめておられているときもあるのですが、本当にそこだけが時間が止まったように感じることもあります。

 

そんなとき、他のご家族が声をかけらてお気付きになられるのですが、それでも、なかなか動くことの出来ないときもあり、私が思うに、そんな飼い主さんは、おそらく、ペットを膝に乗せるのは、これが最後だとわかっておられ、その感触を膝と胸に刻んでおられるのだと思うのです。

 

そんな時間は誰にも邪魔されたくはありません・・・

 

ですので、そんなとき私は、静かに後退りをして、一度、車のドアから離れるようにしています。

 

セレモニーと名の付くものには形式といえる流れのようなものが存在しますが、定められた形式は、あくまでも形式に過ぎず、正直、私は別れのセレモニーにおいて、その形式は、さほど大きな意味を持たないと思えることもあります。

 

そんな形式通りのセレモニーよりも、膝で刻む別れの時間のほうが、飼い主さんにとっては、はるかに大切なことであり、その気持ちを尊重するのも葬儀屋の仕事であると私は思っています。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

 

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