兄弟犬

大東市のミニチュアダックスの兄弟犬のお話を紹介させていただきます。
 
とあるご夫婦がペットショップに立ち寄ったのは11年前に遡ります。
元々、飼うのは1頭と決めていたのですが、ショップの同じゲージで仲良く遊んでいたミニチュアダックスの兄弟に魅了されて、どちらかを選ぶことはできなくなってしまったのです。
 
仲の良い兄弟を引き離すのも可哀想な心境になり、どうせなら兄弟揃って家に迎え入れることにしました。
 
お兄ちゃんはロック。弟はキッドと名付けられ、大東市にお住まいのご夫婦と一緒に過ごすことになり、その日のうちに家族の一員になりました。
 
お兄ちゃんのロックはおとなしい性格であまり家族を困らせませんでしたが、弟のキッドは大きな犬にもかかっていくようなヤンチャな性格でした。
 
食欲もキッドのほうが旺盛で、すぐに自分の皿は平らげ、ロックの皿に割り込み一緒に食べる有様でした。
 
見かねたご夫婦がいつもキッドを叱っていましたがロックは弟にご飯を半分とられても一度も怒ることはありませんでした。
 
兄弟なのに両極端な性格の2頭だったのですが、それぞれの個性が愛らしくご夫婦は兄弟犬を大切に育てました。
 
どちらかというとおとなしいロックはご主人と相性がよく、逆に奥さまはヤンチャなキッドがお気に入りで、散歩のときもご主人とロック。奥さんとキッドの組み合わせでした。
 
兄弟犬がご夫婦のところにやってきて8年が過ぎようとしてたころ、奥さんはロックの異変に気付きました。
 
明らかに元気がなくご飯もほとんど食べなくなったのです。
 
奥さんはご主人が帰宅するのを待ち病院に向かいました。
検査の結果、ロックは肝臓に大きな障害があることがわかりました。
 
ロックの病気は完治は難しく、投薬をしながら生活していくことになり定期的な通院生活を余儀なくされました。
 
元々おとなしかったせいか、ロックは病気が発覚してからも、普段と変わらぬ仕草でご夫婦を安心させましたが、キッドがあきらかに変わったのでした。
 
あんなにヤンチャだったのにロックが病気になってからすっかり元気がなくなったのです。
 
心配になったご夫婦はロックの通っている病院でキッドの検査もしてもらったのですが、異常はなく、健康体そのものだったのです。
 
きっと兄のことを心配して気を落としていたのかもしれません。
 
散歩のときも遅れがちのロックの歩調に合わすようにキッドもゆっくり歩くようになり、ご飯もロックが食べてるのをじっと見守るようになったのです。
 
ご夫婦は病気を患ったロックもそうですが、元気がなくなったキッドを見るのも辛く感じるようになっていました。
 
ロックが発病して3年が経ったある早朝、ご夫婦はキッドの鳴き声で目がさめました。
いつもと違うキッドの悲しげな鳴き声に嫌な予感のまま兄弟犬のベッドを覗き込んだ夫婦の目に飛び込んできたのはキッドの隣で息絶えたロックの姿でした。
 
目も口も閉じた安らかな顔のまま逝ったロックとは対照的に眉間にシワを悲しげに寄せ、眉を下げた顔でご夫婦を見上げるキッド・・・
 
ご主人がロックを優しく抱き上げ、「苦しまずに逝けたんか?」と語りかけました。
奥さんはキッドを抱き上げ「知らせてくれてありがとう」と言いました。
 
ご主人は奥さんに抱かれたキッドの頭に手をやり「お前が看取ってやったんやな。えらかったな」そういって撫でてあげたらしいです。
 
ご夫婦はその日、休暇をとって仕事を休みました。
 
正午になるまでご夫婦は兄弟犬を抱いたまま、ロックの思い出話をしながら祈りを捧げるように静かに過ごしたらしいです。
 
弊社プレシャスコーポレーションにセレモニーの依頼があったのはその日の夕方でした。
 
担当した私はセレモニーの準備をしている間、ご夫婦から兄弟犬が家に来た日から今日までの話を聞かせてもらったのですが、ご夫婦の隣でお行儀よく伏せているキッドちゃんを見て、少し胸が痛くなりました。
 
キッドちゃんは明らかに悲しげな表情をしていて、時折、祭壇に歩み寄ってロックちゃんの顔を覗き込むような仕草をしてました。
 
ご主人がそんなキッドちゃんに向って「キッド。もうこれからは気兼ねせんと、以前のようにヤンチャしてもいいからな」と優しく話しかけていました。
 
全てのセレモニーを終え、挨拶を交わしたとき、奥様に抱かれたキッドちゃんの顔が少しだけ元気になってるように感じました。
 
ご主人が言ったようにキッドちゃんには、自分らしい元気な姿を一日でも早く取り戻してほしいと私は思いました
 
 
 
 

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