「そして愛猫が残してくれた物」幸せを運んでくれた猫~最終回

Sさんは「すいません・・・」とだけ言って、私に背を向けるようにしながら指で涙を拭われました。

そして、その姿勢のまま「とりあえず一度帰って、嫁さんと時間(葬儀の日時)決めてから、また連絡します」と言われた後、頭を下げて帰っていかれたのです。

 

その日の夕刻、Sさんから電話があり「娘らも行きたいって言うてるんですが、僕が夜の仕事なんで、家族全員で行けるとしたら、夜中か早朝しかないんですよ。そんな時間帯でもいけるんですか?」とお問い合せがあり、私は「当会館は24時間体勢ですので、事前に予約してくだされば深夜でも早朝でも構いませんよ」と返事をしました。

「そうなんですか?」と少し驚いたような声で返事されたSさんは、そのことを奥さんに伝えた後「すいません。もう一度、家族と相談してから時間決まったら電話します」と言って電話を切られました。

 

その後、すぐにSさんから再度、電話があり「娘らが学校行く前に行こうと思うんで、明日の朝6時でもいいですか?」と翌朝にタラちゃんの葬儀を予約されたのです。

 

そして、翌朝6時少し前、Sさん家族はプレシャス会館に来られました。

初めて見たタラちゃんは、Sさんが、亡くなる前日まで元気だったと仰っていたこともうなずけるように、毛艶も良く、健康そうな、ふっくらとした体つきでありました。

 

早朝の静けさに包まれたセレモニーホールでタラちゃんのお葬儀は始まり、お焼香の儀の後、最後のお別れの時間になり、Sさん以外のご家族は祭壇のタラちゃんの体を優しく撫でておられました。

家族が泣きながらタラちゃんとお別れをしている光景をSさんは椅子に腰かけたまま、静かに見つめていらしたのですが、その眼差しは、何ともいえないほど、悲しくもあり、優しいものでありました・・・

 

出棺のお時間になり、Sさんの手でタラちゃんは火葬炉に納められ、ご家族が合掌でお見送りをする中、私は点火のスイッチを入れたのです。

 

火葬が始まり、この段階で、奥さんとお子さん達は、お見送りを終えられ、会館を後にされることになりました。

 

Sさん夫婦は幼いお子さん達に骨になったタラちゃんを見せたくないほうが良いと判断をされたのです。

 

火葬の間、一人、会館に残られたSさんから私は、タラちゃんと出逢った日からのお話を聞かせてもらいました。

 

お話の中でSさんは「ほんまにタラを家に連れて帰ってきた次の日から店が繁盛するようになって、自分自身も嫁と結婚して、子供も生まれ、すべてが順調な人生になったような気がするんですわ・・・」と優しい表情を浮かられて言っておられました。

 

実はペットの葬儀のとき、Sさんと同じように「ペットを飼ってから運気があがった」と口にされる飼い主さんはとても多くいらっしゃるのですが、しかし、それは単に、ペットが幸せ運んでをきたというメルヘンチックな話なのではないと、私自身は考えています。

ペットが幸せを運んできたというより、ペットと共に暮らすことにより、日々の生活の中で癒しや愛情を感じ、それらから飼い主さんの心に変化が起き、それがまた新たな穏やかな気持ちを生みだし、良い運気を呼び込んでいるのではないかと私は思うのです。

 

その持論をSさんにもお話させてもらったのですが、Sさんは「そうですね・・・そうかも知れません・・・」とうなづかれた後「それにね、タラのね、健気に生きる姿を見てね、なんか、そんときの自分の姿が重なったというか・・・俺も頑張らんとあかんなって思ったんは確かですわ・・・」と言われた後、当時のことを思い出すような遠くを見る目をされました。

 

そして、火葬が終わり、Sさんは自らの手でお骨上げをされました。

平日の早朝からのセレモニーということもあり、この日、午前中は他の葬儀の予約も入っていなかったので、骨上げを終えられる時間を見計らい私はSさんにコーヒーを用意しました。

 

その後、私とSさんはコーヒーを飲みながら、お互いのペット観や仕事の話など、気が付けば1時間ほど話し込んでしまったのですが、そのとき、Sさんの奥さんが会館に戻ってこられたのです。

 

ちょうど、私とSさんがお互いの仕事の失敗談で笑っているときだったので、それを見た奥さんは困惑したような表情で「遅いから心配したやん・・・」と言われ、Sさんは「ごめんごめん^^ちょっと野村さんと話してたら遅くなってん。もう終わったから帰る」と弁解された後、私に「トイレだけかしてください」と言ってトイレに行かれました。

 

「すいません。なんか旦那さんを呼び止めるような感じで話し込んでしまって」と私も奥さんに頭を下げたところ、奥さんは「いえいえ。こちらこそ長居したみたいですいません」と頭を下げられました。

 

そして、奥さんは「いや、てっきり落ち込んで帰ってこないんかなって心配になって見にきたんですけど、なんか笑ってたんで安心しました・・・」と安堵したように笑みを浮かべられたのです。

 

「そうですね、やっぱり旦那さんにとってタラちゃんの存在は大きかったようなんで、いろいろとタラちゃんの話をしてるうちに仕事の話になってしまって・・・」と説明するように言いました。

 

その後、Sさん夫婦は肩を並べるようにしながら会館を後にされたのですが、別れ際、Sさんは「また今日からタラのためにも気持ち引き締めて頑張ります」と力強く言われ、帰って行かれたのです。

 

ペットが幸せを運ぶ・・・

先程も述べましたが、実際はペットが幸せを運んでいるのわけではないと、私は思っています。

 

ペットが幸せを運ぶのではなく、共に暮らすことになって、新たに芽生えた温かな感情が飼い主さんの心の成長に繋がり、その成長が多くの幸せを呼び込んでいるだと私は思っています。

 

そして、ペットが旅立ってしまったとき・・・

 

今度はペットが残してくれた数々の思い出が、また新たな感情を生み、その感情が、心の財産となって、その人の心を豊かにするような気がするのです。

 

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

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