犬の葬儀・火葬~門真市の柴犬 無口なゴロウくん

柴犬のゴロウくん 享年16歳

「無口な犬やった・・・・」

これはゴロウくんのご火葬のときに火葬炉の煙突を見て飼い主さんが言った言葉です。

犬に無口という表現は少し変かも知れませんが、生前のゴロウくんを知ってる人ならピッタリな表現に感じると思います。

 

ゴロウくんは幼いときから、あまり吠える犬ではありませんでした。

散歩のときに大きな犬に出くわしても動じることもなく、度胸が据わっていた犬だったそうです。

たとえ、どんなに威嚇されてもジっと相手を見据えるだけで、吠え返したりすることもなく、普段の生活でも無駄吠えはしなかったらしいです。

 

そんなゴロウくんを飼い主さんは「昔かたぎというか、男らしい犬やった。犬というより息子みたいな存在やった」と話してくれました。

飼い主さんは一人暮らし。数年前に定年退職をむかえてからは、趣味である渓流釣りや登山を楽しむ生活を送っていらっしゃいました。

どこにいくときもゴロウくんと一緒で、釣りや登山仲間からもゴロウくんは愛されていたようでした。

「魚というのは人の気配がしただけで、逃げよるんですわ。だから足音もせんように近づいて釣るんですけど、ゴロウはそれがわかってるように、吠えることもなく静かにしてたんですわ」

私も釣りがすきなので、とても理解できる話でした。

「そういう意味では、邪魔にならんというのか、良い相棒でしたわ。そういう躾けをしたわけではないのに、もって生まれた性格ですな」

自宅の駐車場にとめさせてもらった火葬車の前で飼い主さんは懐かしむようにゴロウくんの話を私にしてくださり、私も話に聞き入りました。

「それが・・・」飼い主さんは急に黙り込まれ、少し間を置いてから「それが、亡くなる三日前に悲しそうな声で吠えよったんですわ。ゴロウが吠えるのは、よっぽどのことやと思うて、病院へ連れていったんですわ・・・もうそんときはかなり悪い状態で・・・施しようのない状態で・・・」

飼い主さんは急に黙りこまれ、遠くを見つめるような目をされ、静かに涙をながされました。

お気持ちを察することが出来ましたが、飼い主さんとゴロウくんの思い出と絆の深さに、私はかける言葉を見つけることができず「○○さん・・・」と静かにハンカチを差し出しました。

飼い主さんは「ありがとう・・・かまわへん」とハンカチを受け取らず、指で涙を拭い、独り言のように冒頭の言葉を仰りました。

 

ご火葬が無事に終わり、お骨になったゴロウくんを見て、飼い主さんは「ゴロウすまんかったな。お前ずっと我慢してたんやな。気付いてやれんですまんかった。許してくれな」とひざまづかれました。

私は飼い主さんを抱かかえるようにして「ゴロウくんは高齢でした。手術に耐えれる体力もなかったかもしれません。それに○○さんと一緒に過ごしてきっと幸だったはずです」と声をかけましたが、私の言葉は飼い主さんの耳に届くはずもなく、駐車場は重い沈黙に包まれました。

 

その後、飼い主さんは、ゴロウくんのお骨を一つ一つ丁寧に骨壷に納められ、しっかりと胸に抱いておられました。

すべてのセレモニーを終え、会社に向う車内で私は、飼い主さんのことが心配になると同時に自分の無力さを痛感していました。

火葬のときに飼い主さんが言った「やかましいのが居なくなると寂しいと言いますけど、おとなしいのが居なくなるのはもっと寂しい」

言われてみたら、その通りのような気がしました・・・

私は帰り際、私と飼い主さんの共通の趣味である、釣りを、機会があれば一緒に行こうと約束しました。

でも私はガサツな性格なので、ゴロウくんのように有能な相棒にはなれるように修行が必要かもしれませんね。

 

 

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