「重い言葉」遺骨のメモリアルアクセサリーに込められた ある世界チャンピオンの魂 2
火葬の待ち時間のとき、Tさん家族は比較的、リラックスされた様子で時に談笑も交えながら過ごされていました。
話題は大枝公園ちゃんの生前のお話から爆笑エピソードに話題に変わり、私も話の輪に入れていただいたのです。
特に長男さんと次男さんは、父であるTさんの影響もあり、共にボクシングをされていることもあって、いつしか話題はボクシングの話になり真剣な表情で話をされていたが印象的でありました。
この時、次男さんはプロデビューを目指し、ハードなトレーニングの日々を送っておられた時期で、ボクサーの先輩でもある父や兄の話を聞く目は真剣そのものでありました。
Tさん家族は、よく家族揃ってテレビにも出ておられたのですが、テレビで見た通り、仲が良く、それともう一つ、とくに二人の息子さんは、私と話すとき、常に敬語で、とても礼儀正しい印象を受けました。
そんなとき、Tさんが家族から一人離れ、プレシャス会館で葬儀をされた飼い主さんが先立ったペットにあてた手紙が展示されてある掲示板のほうに歩いていかれたのです。
Tさんは無言で、手紙を一枚一枚、読んでおられたのですが、その後ろ姿はどこか寂しげでありました。
気になった私はTさんの邪魔にならないように、少し後ろで同じように掲示板に目をやりました。
一通り、手紙を読み終えたTさんは、斜め後ろに居た、私に気付くと、小さく会釈するようにうなずかれ、「ペットの葬式ってどんなんするんやろ~思ってたんですけど、ほんま人間と同じなんですね・・・」と声をかけてくださったのです。
「そうですね。時代的にペットは家族の一員という位置付けになりましたんで、私共のような仕事も必要な時代になったのかも知れません」
私はそう答えました。
「大変な仕事やね」
Tさんは労うように優しげな表情で、そう言ってくださったので、私は「いえいえ。」と恐縮して返事した後「Tさんの方こそ大変な仕事じゃないですか」と言いました。
Tさんは笑いながら「まあ大変言うたら大変やけど、僕は好きでやってるからな」と表情を和らげられたのですが、眼光だけは鋭いものがあったのです。
ボクシングファンの方ならご存知だと思うのですが、Tは40歳を過ぎた現在でも現役を続けておられ、本気で「もう一回世界チャンピオンになる」と目標を持って日々、トレーニングを続けておられるのです。
国内ルールに規制により、Tさんはボクシングの試合を国内ではできない状態であり、そのため、試合をするときは海外でリングに立たれています。
実は私は大のボクシングファンでもあり、Tさんのそんな現状も知っていました。
そんなTさんと二人で話す機会など、普通では絶対あり得ないことなので、個人的、聞きたいことはいっぱいあったのですが、今はTさんの愛猫の葬儀中であり、私は葬儀屋という立場であります。
仕事を忘れてあれこれ質問できるはずもなく、仕事に徹しないといけないと必死で自分に言い聞かせながら気持ちを切り替えました。
しかし、Tさんの口から次に出たのは「僕、ボクシング好きなんでね・・・」という言葉でありました。
「はい。」
言葉を飲み込むように、私がそう返事すると、Tさんは、まるで独り言を言われるように、いろんなご自身の話をしてくださったのです。
内容はプライバシーなことでもあるので、ここでは控えさせてもらいますが、Tさんのボクシングに対する熱い想い、その言葉の一つ一つは私の心に強く響くものでありました。
Tさんは最後に「自分の道は自分で決めなあかん。ボクシングかって息子らにもやりたかったらやればええし、やりたくなかったらやらんでエエって言うてます。だから本人がボクシングする~言うから「じゃあやったら」言うてるだけで、僕がさしてるわけではないんですわ。それは僕も同じで自分が好きで続けてるだけで、目標あるからやってるだけですわ」と言われたのです。
私はうなずいた後、少し間を置いて「Tさんの今の目標とはなんなんですか?」と質問をしました。
Tさんは即答で「もう一回世界チャンピオンになることです。それしかないよ。」と真顔で答えられたのです。
そんなTさんの眼光を見た私は自分の質問が愚問であったことに気付きました。
そして、そのとき、大枝公園ちゃんの火葬が無事に終わったのです。
ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。
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野村圭一
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