「追跡、そして発見」再会を実現してもらうべく~探偵さんと同行した二日間~10

Rちゃんであると確信した私は、Rちゃんから警戒されないように姿勢を低くし「大丈夫・・・大丈夫・・・こわくないよ・・・味方なんだよ・・・ずっと探してたんだよ」と懸命に話しかけました。

しかし、Rちゃんは相変わらず緊張したように耳を反るようにしながら私の目を見ていて、刺激を与えたらすぐに駆け出しそうな雰囲気を醸し出していたのです。

 

その時、ようやくNさんから「野村さん?電話くだしました?」と電話があったのです。

「ヽ(≧Д≦)ノNさぁーーーーーーーん!空き地の隣の工場に白い猫が居るんです!すぐ戻ってきてください!!!」と私が言うと「本当ですか?今、野村さんの場所からその猫は確認できる位置なんですか?」とNさんは至って冷静に聞かれました。

「そうですそうです。て、いうか、今、目が合ってます」と、私が興奮を抑えきれずに言うと「え?そんなに近いんですか?」とNさんは驚いたように言った後「捕まえれそうですか?」と訊ねられたのです。

「いえ。今、その猫は工場の敷地内に居るんで、これ以上は近づけません。それに、かなり警戒されてるので、少しでも近づいたら逃げそうな気がします。」と私は正直に答えた後「それにNさん。おそらく、いえ、間違いなくこの猫、Rちゃんですよ」と告げました。

「本当ですか!でも、敷地内なんですよね?・・・わかりました。飼い主さんに直接呼びかけてもらって出てきたところを保護するほうがいいですね。野村さん、飼い主さんに電話してすぐ来てもらいますんで、一度切りますね。僕もそちらに向かってますんで、それまでRちゃんがそこから逃げないように見張っててください」と言われたのです。

「ちょちょちょNさん!逃げないように見張るって!」と私が言ったときには、すでに電話は切れていました。

「もう!マジかよ!どうしたらエエねん!」と私は通話の途絶えたスマホの液晶に向かって、半ばヤケになって叫んだ時、Rちゃんがひょこっと前を向き、ゆっくりとした足取りで工場の奥に向かって歩き出してしまったのです。

「だああああ!Rちゃん!待って!Rちゃん!」と、私はこの時、初めてRちゃんの名前を呼びました。

 

私に名前を呼ばれたRちゃんは明らかに反応を示し、ピタっと歩くのをやめたのです。

「ほら・・・やっぱりRちゃんだ・・・もうすぐママ(飼い主さん)が来まちゅよ。お願いだから行かないでくだちゃい(私この時、なぜか赤ちゃん言葉)・・・」と、私は工場の門にへばり付き、ひざまづくようにして言いました。

 

私の言葉を理解してるのか、いないのか、Rちゃんは何とも言えないシレ~とした上目づかいな目で再び私の顔を見つめていました。

その時、Nさんから着信があり、私がスマホの画面をスクロールして電話をとろうとした、その仕草にRちゃんは反応し、走り去ってしまったのです。

「あ!待て!R子!ストップ!R子!(私思わず命令形&呼び捨て)」と叫びながら電話に出ると「野村さん飼い主さんは電話に出ないんですよ。Rちゃんはまだそこにいますか?」とNさんが聞かれたので「今、工場の中を通って向こう側に走っていきました!」と私は伝えました。

「向こう側?つまり、僕が居た方角ですか?」とNさんは訊ね「そうです!国道側に行きました!」と私は言いました。

「わかりました。僕は向こうに戻ります。野村さんはそこに居て見張ってください」とNさんは言われ、私は暗い工場内の敷地を目をこらしてRちゃんの姿を探したのです。

私とNさんは工場を二人で挟むような恰好で、逐一、Rちゃんの場所を電話で報告しあったのですが、やはり、猫はすばしっこくて、すぐに見失っては、また確認するということの繰り返しでありました。

そして、それから10分ほど経過したとき、私とNさんは完全にRちゃんの姿を見失ってしまったのです。

「Nさん。こうなったら門を乗り越えて中に入って探しましょう」と私が言うと、電話の向こうのNさんは「警報が鳴るからダメです。最後の最後は僕が侵入しますんで、野村さんは入らないでください」と断固として、強硬手段をとることを許してくれませんでした。

おそらくNさんは、不法侵入等の罪で私に迷惑がかかることがあってはならないと思っていたのでありましょう。

 

しかし、私は、このままRちゃんを見失うことのほうが後々、後悔するような気がして、Nさんの静止の言葉を無視し、工場内に入る覚悟を決め、工場の門に手をかけたのです。

まさに、その時、どこから現れたのか、Rちゃんが私の足元を駆け抜け、道路の脇を通るようにして走っていったのです。

「Nさん!居ました!今、工場から出て、宗教施設の方向に向かって走っていきましたんで、後を追います!」と私は走りながらNさんに、そう伝え、全力でRちゃんを追いました。

闇夜の中でもRちゃんの白い体は目立つため、私は見失うことなく、後を追えました。

そしてRちゃんは100メートルほど走った後、一件の民家の前で止まり、振り返って私を見た後、慣れた足取りで民家の窓に飛び乗り、僅かに開いた窓の隙間から民家に入って行ってしまったのです。

その光景を目にした私は、走るのを止め、歩きながら民家の前まで来ました。

すぐにNさんが私に追いつき「Rちゃんは?」と、息を切らしながら訊ねたので、私は民家の窓を指さし「あそこから中に入りました」と言うと、Nさんは「やっぱり・・・ここだったんだ・・・」と口にされたのです。

私は「『やっぱり』って?どういう意味ですか?」と訊ねると、Nさんは額の汗を拭きながら「実はこの家のことは昨日、近所の人からの聞き込みで『野良猫を自由に出入りさせてはる家』と聞いてたんですよ」と言われました。

「そうなんですか?」と私が驚きを隠さずに言うと、Nさんは「はい。それですぐにこの家を訪ねて、直接、住民さんにRちゃんのことを訊ねたんですけど『知らない』って言われて、その時は確証もなかったので、ビラを渡して帰ったんですよ」と説明してくださったのです。

「ちょっと待ってください。と、言うことは、ここの住民さんはRちゃんが飼い猫で、飼い主さんが捜しているのを知ってて隠してたんですか?」と私が、不快感を隠さず言うと「かも、知れませんが、自由に出入りさせてるところをみると、そこまで関心を持ってないと言うか、本当に知らなかった可能性もありますんで、今は何とも言えませんね」とNさんは言いました。

「Rちゃんが中に入ったのは僕はこの目で見たんで間違いありません。今なら中に居ますよ。インターホン押して住民さんに事情を説明しましょうよ」と私は提案したのですが、Nさんは首を横に振り「そうしたい気持ちはやまやまですけど、さすがにこの時間に訪ねるのは(その時、時刻は午前3時50分)は非常識なんで、朝まで待ちましょう」と言われました。

確かに、この時間に就眠中の住民さんをおこして訊ねるのは非常識なことであるのは、わかっていたのですが、正直、私も引っ込みのつかない状態になっていたのです。

 

そんな私の気持ちはNさんにも痛いほど伝わっていたようで「野村さんの気持ちはわかります。でも、やはり、ここは住民さんが起きられるまで待つべきです。僕たちの非常識な行動は、最終的に飼い主さんに迷惑をかけることにもなりかねません」

 

Nさんに、そう諭され、私は少し冷静になりました。

 

 

ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

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