「火葬が終わるころ」心残り8

火葬が中盤に差し掛かった頃、Mさんにお骨壺とサイズとお色を決めていただきました。

 

そのとき、Mさんは来館されてから初めて笑みを見せられ、私も心なしか、ホっとした気持ちになり、もう一度、斎場に戻ったのです。

 

私は火葬炉の小窓からお骨の状態を確認したのですが、愛犬ちゃんのお骨もしっかりとしたものであり、おそらく、このまま綺麗な状態を保って終えることができると感じました。

 

そのとき、Tさんがお車で戻って来られ、私は小さく頭を下げて挨拶をし、Tさんも「どうも」と声をかけてくださり、そのまま斎場を抜けて待合室に入られたのです。

 

待合室に戻られたTさんに、Mさんはお骨壺を見せながら、何やら話されていたのですが、斎場からは会話の内容までは聞き取れませんでした。

 

そのとき、TさんはMさんの隣の席に座られたのですが、少しだけ困惑した表情をされていたのです。

 

それからTさんはMさんに何かを説明されているようだったのですが、その説明を聞いているMさんの表情も少しだけ曇っていくように見えた私は、気になったので、待合室に入ったのです。

 

私が待合室に戻ったとき、Mさんが「・・・そうですね。わかりました・・・そうします」と返事をされているところでありました。

 

そして、Mさんが私に「すいません・・・」と声をかけられたので返事をすると「やっぱり小さい方の骨壺に変えてもいいですか?」と言われたのです。

 

「それは構いませんが・・・小さい方だと全部収まりきれないかも知れませんが構わないのですか?」と訊ねると、Mさんが答える前にTさんが「でも、普通、こういうのって全部拾わないですよね?人間の場合でも一部っていうか、代表的なとこを拾って骨壺に収めるんじゃないんですか?」と質問するように言われました。

 

私は「そうですね、人間の場合、特に関西ではそのような収骨が定着してますが、小型のペットの場合、人間ほどお骨も大きくないこともあり、全部収めることも少なくはありません。とくに当社は個別葬専門でやってますし、お骨壺のサイズが大きくなっても追加料金がかからないので、半数以上の人は全部収められていますね」と返答しました。

 

その説明を聞いたTさんとMさんは共に無言で考えるような表情をされていたのですが、Mさんが顔を上げ「でも、小さい方でいいので」と控え目な口調で言われたのです。

 

「わかりました」

 

私はそう返事をし、一つ小さな3寸の骨壺を用意させてもらうことにしたのです。

 

そのとき、待合室は何とも言えないような沈黙に包まれたのですが、飼い主さんであるMさんが、そう決められた以上、それに従うことしかできず、私は骨壺を交換した後、再度、斎場に戻ったのです。

 

ちょうどそのとき、火葬が完全に終わり、Mさんの愛犬ちゃんはお骨になっていました。

 

そのお骨は真っ白でとても綺麗な状態を保ったままであり、お骨の量からすると、やはり3寸では全て収まりきらないなと私は感じたのです。

 

何気に待合室に目をやると、Mさんはうつむき加減で、Tさんも顔を上げていらしたのですが、無言のままでありました。

 

Tさんが車をとって戻ってこられてすぐ、お二人の間でどのような会話があったのかは、わからなかったのですが、そのときにTさんが何かを助言され、Mさんがそれに従うようにお骨壺のサイズを小さくされたのは間違いないと私は思っていました。

 

そのことでMさんが納得してるのであれば、何も問題ないのですが、私にはMさんは内心、納得していないのではないかと、気がかりであったのです。

 

ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

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