「施し」生前と変わらぬ姿のままで~2

Yさん宅は本社のある大阪府の守口市より、車で15分ほどの距離でありました。

 

私が到着すると、車のエンジン音を聞きつけたお母さんが玄関先まで出迎えてくださり「すいません急で・・・」と丁寧に頭をさげられた後「どうぞ中にお入りください」と、リビングに案内してくださいました。

リブングでは花柄のタオルに包まれた、チワワちゃんが、横たわっており、目を薄っすらと開いたままであったのですが、毛にも艶があり、とても綺麗な姿でありました。

 

私はその前に正座してチワワちゃんに合掌をした後、お母さんに向き直り「死因はわかっているんですか?」と訊ねたところ、お母さんは目を潤ませながら「いえ・・・昨日まで普通にご飯も食べて元気だったんです・・・今朝、起きて気付いたときにはこの状態だったんで、すぐに病院連れて行ったんですけど、先生も『腦か心臓発作ですかね・・・』と首を傾げるだけでハッキリとした理由はわからないって言ってました・・・」と、お母さんはチワワちゃんの顔を見つめながら、自分の肩を抱くようにして言われたのです。

 

私も同じようにチワワちゃんを見つめながら「そうですか・・・」と返事をした後「とりあえず、綺麗な状態を保つには、すぐに衣装品を施してあげたほうがいいのですが、構いませんか?」と確認をするように訊ねたところ、お母さんは「はい。お願いします」と頭を下げれたので、私はすぐに車に積んだ専用の用具と衣装品を取りに行きました。

 

そして私はお母さんが、見守る中、私はチワワちゃんの全身を抗菌タオルで拭いてあげ、ブラッシングで毛並みを整えた後、長期安置用の衣装品を施してあげたのです。

 

「これで、最低でも10日間は綺麗な状態が保てます。ですので、娘さんが戻られるまで、大丈夫だと思います。」と、お母さんに説明した後、「あの・・・娘さんは、まだ、この事(チワワちゃんが亡くなったこと)を?」と訊ねました。

 

私に、そう訊ねられたお母さんは「はい・・・まだ・・・」と表情を曇らせながら返事をされた後「こんなとき、皆さんはどうされるんですかね?やっぱりすぐに伝えたほうがいいんですかね?」と、逆に質問をされたのです。

 

私にはお母さんの質問の意図が理解できました。

お母さんは娘さんが海外旅行を満喫されているときに愛犬の急死を報せることで、せっかくの旅行に水を差すことを気にされていたのであります。

かと言って、報せないまま、娘さんが戻られたとき「なぜすぐに報せてくれなかったのか?」と憤慨されることも充分に考えられます。

このような判断は、とても難しいものであり、ましてや、出先が海外となると、なおさらであります。

 

それらを踏まえ「う~ん・・・難しい判断ですね。娘さんの性格やチワワちゃんとの関係性によっても変わってきますし、一概に『こうするべき』と言えるものではないですね」と私は曖昧な返事をしました。

「そうですよね・・・」とお母さんは、膝をたたみながら、私の隣に座りこむようにして涙を流されたので、私は「あのお母さん。他に家族は?」と質問をしたところ、「はい。主人と息子がいます」とお答えになられたのです。

 

「チワワちゃんが亡くなったことをご主人と息子さんには?」と訊ねた私に「はい。主人にはすぐ電話して言いました。息子も主人の会社で働いてるので、主人が伝えてくれました。それで主人が『とりあえずいつも行ってる病院でみてもらってこい』って言ったんで、病院行ってきて、その間に息子がおたくさん(当社)のことをインターネットで調べてくれて、私が電話したんです」と事の経緯を話してくださいました。

 

Yさんの家族構成を知り、少なくともご主人さんと息子さんが、事実を知っておられることで、私は少し安心しました。

その上で「そうですか。では、ご主人さんと息子さんが帰宅されるのを待って、娘さんに報せるべきかどうか、相談されるほうがいいですね」と私は伝えたのです。

「はい・・・そうですね・・・そうします」とお母さんはポツリと言った後、「あの子、悲しみやるやろうな・・・」

そう言って、また涙を流されたのです・・・

 

私はそんなお母さんにかける言葉も見つけれないまま、その日はYさん宅を後にしたのです。

 

予定では、娘さんが帰って来られるのは、その日から五日後のことであり、それまでに悲しい事実を報せるかどうかは、ご主人さんと息子さんを交えて相談されるということでありました。

 

翌日、私は、Yさん家族がどのような決断をされたのかが、気になりYさんの自宅に電話を入れました。

電話にはお母さんが出られ、私は「プレシャスコーポレーションの野村です」と名乗った後「お母さん、それで、ご主人さんや息子さんはどのように言っておられました?」と訊ねたところ「はい。やっぱりね、楽しみにしてやった旅行やねんし、帰ってきてから言ったほうがエエやろうってなりましてね。そうすることになったんです」と少し平静さを取り戻したような口調で、そのように言われたのです。

「そうですか。ご家族の意見がそれで一致したのなら、その判断で正しいと思います」と私は伝えました。

「はい。もし、危篤なら言ってあげんといかんかなって思うんですけど、もうね・・・はい・・・」とお母さんはそこまで口にされた後、言葉を濁されたのです・・・

 

いずれにせよ、娘さんが帰国するまでは報せないでおこうと、ご家族は判断されたので、チワワちゃんのセレモニーは早くても四日後以降に執り行うことになったのです。

 

 

ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

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