「悲しみと怒り」つらく、やりきれない日 5

私は到着されたブリーダーさんに頭を下げて自己紹介をしました。

 

ブリーダーさんは小さな声で「どうも・・・」と挨拶を返してくださり、そのまま飼い主さんと寄り添うようにしながらトイプードルちゃんがいるセレモニーホールの方に入られたのです。

 

セレモニーホールでは、Kさんが一人、立ったままの状態で待っておられたので、私は参列者さんが全て揃われたこともあり「皆さん一度、おかけください」と声をかけました。

 

そして、最前列の椅子に、Kさん、飼い主さん、ブリーダーさんの順で腰かけられたのですが、表情は三者三様で、Kさんは思いつめたようにうつむき加減で、飼い主さんは、ただ悲しみを堪えれず泣いておられ、ブリーダーさんは目に涙を溜めながらも厳しい表情をされていたのです。

 

私はそんな皆さんの心の状態を感じながら、祭壇に向き直り、あらためてトイプードルちゃんに合掌を奉げました。

 

背中越しに皆さんが同じように合掌されるのが伝わってきたのでありますが、そんな中で、私は例えようのない緊張感も感じていたのです。

 

ブリーダーさんが来られてから、明らかに空気感が変わったのですが、おそらくブリーダーさんはこの度の経緯を飼い主さんから聞かされ、悲しむと同時に怒り似た感情も持たれたのでありましょう。

 

もちろん、その怒りはトイプードルちゃんが死に至った原因を作られたKさんにであります。

 

そして、Kさんの知り合いの葬式屋である私にも、その怒りが少しだけ向けられていたのかも知れません。

 

それはブリーダーさんの表情からも伝わってきたのでありますが、私はこのとき(このセレモニーは何事もなく終わらないのでは・・・)と思っていたのです。

 

そんな不安と緊張を払拭できぬまま、私は読経をあげたのです。

 

読経の後、飼い主さん、ブリーダーさん、Kさんの順でお焼香をあげられました。

 

そして、最後のお別れのお時間になり、私は三人をセレモニーホールに残し、火葬の準備を整えるために斎場に向ったのです。

 

火葬炉の最終点検を済ませ、準備を整えた後、私は再びセレモニーホールがある会館内に戻りました。

 

セレモニーホールでは飼い主さんとブリーダーさんがトイプードルちゃんを囲むようにして優しく撫でておられたのですが、Kさんは椅子でうつむいたままでありました。

 

このとき、Kさん一人と飼い主さんとブリーダーさんの二人の間には、見えない仕切りのようなものが存在しており、それは、危害を加えた側と被害者側の関係のように私には見えたのです。

 

もちろん、Kさんに悪意はなかったのは言うまでもないですが、トイプードルちゃんが命を落としてしまった今、その事実だけが重くKさんに圧し掛かっていたと思います・・・

 

悔やんでも悔やみきれない・・・

 

申し訳ないことをした・・・

 

Kさんの表情からはそれらの感情が滲んでいたのです。

 

私は三名の中で唯一、Kさんとだけ面識があったので、飼い主さんやブリーダーさんの悲しみや怒りもじゅうぶん理解できたし、理解した上であっても、正直、少しだけ気がかりであったのです。

 

もちろん、だからといって飼い主さんやブリーダーさんの気持ちを考えると、それも致し方無いことだというのもわかっていました。

 

そんな色んな複雑な思いだけが、自分の心に覆いかぶさってくるようであり、私はその場で立ち竦むながら、ただ、セレモニーホールの三人を見つめていたのです。

 

 

ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

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