「分け隔ての無い愛情」ある新聞配達員さんと野良猫ちゃんのお話 最終回

「そんなことがあったんですか・・・」

 

私はSが仔猫ちゃんとの出会いからご火葬をしてあげようと思われた経緯を聞き、そのようにしみじみとつぶやいたのです。

 

Sさんは目に涙を浮かべたままであったのですが、私に一通りお話をされたことで、幾分か落ち着かれたような表情をされていました。

 

そして、私は何度かうなずいた後、あらためてSさんに「やっぱりこの子の名前はSさんがつけてあげるべきですよ・・・僕はそう思います」と告げたのです。

 

「そうですね・・・」

 

小さな声でそうお返事されたSさんは顔を上げ、祭壇の仔猫ちゃんを見つめるようにされた後、ふとセレモニーホールの左奥にある窓に目をやられました。

 

Sさんは少し遠くを見るような目で窓からこぼれる日差しを見つめながら「きっと、この子が生まれたときって、ちょうど桜が咲いてたと思うんです・・・女の子だし『さくら』って名前がいいかな・・・」と、仔猫ちゃんに素敵な名前をつけられたのです。

 

おそらく仔猫ちゃんは生後2週間前後であり、その日に遡ると、大阪はさくらが満開な時期でもありました。

 

「さくらちゃんか・・・いいですね。ぴったりな名前だと思います」と私は笑顔で言うとSさんは少しだけ照れたようにうつむかれたのです。

 

その後、私は読教をあげ、Sさんと一緒に仔猫ちゃんにお焼香をあげました。

 

最後のお別れのお時間になり、Sさんはもう一度、仔猫ちゃんを手の平で優しく抱き上げた後、自らの手で仔猫ちゃんを斎場まで連れていってあげ、火葬炉に納められたのです。

 

点火のとき、合掌をされたままSさんは涙を流されていましたが、ちゃんとお見送りをすることが出来た安堵感からか、表情は穏やかなものでありました。

 

15分後、火葬は無事に終わり、仔猫ちゃんのお骨を小さなお骨壺に収骨されたSさんは、そのお骨壺大切そうに両手で抱くようにしながら「ありがとうございました」とお礼のお言葉をくださったのです。

 

「いえいえ。とんでもございません」と私も頭を下げて言った後「ところで、お骨はどうされるんですか?」と私は訊ねました。

 

と言うのも、Sさんはお電話でご予約をされたとき、火葬後のお骨に関して、お引き取りになるか、そのまま納骨されるかを決めかねていらしたからであります。

 

Sさんは両手に抱いたお骨壺を見ながら「そうですね・・・どうしようかな・・・」と独り言のように言われた後「やっぱり自分のペットでもない猫のお骨を持っておくというのは変なんですかね?」と訊ねられたので、私は「いえ。そんなことはありませんよ。私の会社で野良ちゃんの火葬をされる方は年に数度しかないのですが、それでも半数の方は、一度、自宅に持って帰られて、自宅で供養される人もいらしゃいますよ」と事実をお伝えしました。

 

そしてSさんは「そうなんや・・・」と納得するように言った後「やっぱり、少し持っておいてあげたいんお骨は持って帰りますね」と力強く言われたのです。

 

私は「そのほうが仔猫ちゃんもママ猫ちゃんも喜ぶと思います。それに出逢ったときは亡くなっていたとはいえ、Sさんは仔猫ちゃんにとって立派な里親さんであると僕は思ってます」と私は本心からそのように伝えました。

 

会館前横の自転車置き場までお見送りに出た私にSさんは何度も頭を下げ帰っていかれたのですが、別れ際「来るまでは本当に不安だったんです・・・でも地元にこんないいペット葬儀屋さんがあって良かったです。教えてくれたバイトの子にもお礼言わなあきませんわ」と笑顔で言ってくださったのです。

 

これ以上ないお言葉をもらい、私は今一度、深く頭を下げてSさんをお見送りしました。

 

帰っていかれるSさんの後ろ姿を見ながら、私は「ママ猫ちゃん・・・あなたが選んだ人は間違いではなかったよ」と心の中でそうつぶやいていました。

 

そして、同時に胸がほっこり温かになっているのを感じていたのです。

 

Sさんのように年に数度、自分のペットではない、野良と呼ばれる猫や犬のご火葬をされる人がいます。

 

そのような人に共通するのは、当然ながら優しさではあるのですが、その優しさの根本には動物に対する「分け隔ての無い愛情」が存在すると、私はいつも感じるのです。

 

そして、そんな人とお会いするたびに、私は「自分がその立場ならどうするだろう・・・」と、自問自答するクセがあるのですが、正直言って、私にはそのような愛情があると、同じような行動が出来ると、そう思えないことのほうが多いのも事実であります。

 

それ故に、Sさんのような人で出会う度に、私は感動に似た感情を持ってしまい、心が洗われるような気になってしまうのです。

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

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