「忍耐力」再会を実現してもらうべく~探偵さんと同行した二日間~3
気持ちを切り替え、Rちゃんは必ず生きていると信じ、地域住民さんの聞き込みを再開した私は、町にある特徴があることに気付きました。
それは、この町には野良猫がやたらと多いという事実であります。
マンションの駐車場、公園、路地、至る所で野良猫を見かけるのです。
Nさん曰く、野良猫にはテリトリー意識があるので、迷子の猫を探すにあたり、重要な要素の一つであるそうです。
よって、野良猫を見かけたら、必ず見かけた場所と、可能なら性別をチェックするようにNさんから言われていたのですが、とても数が多いので、すごく大変な作業でもありました。
毛色的には黒猫が圧倒的に多く、次にキジトラと三毛で、8割はこの三種であり、白系の毛の猫は一割にも満たないほどの少なさでありました。
しかも白系といっても、Rちゃんのように全身真っ白の猫は、捜索を開始してから一度も見かけることはなかったのです。
そして、それを裏付けるように、住民さんからの情報も「黒い猫はよう見るけど、白は見たことない」や「白っぽい猫は見たことあるけど、全身白ではないな」というものばかりでありました。
それは、別方面で聞き込みをされていたNさんも同じようで、私と定期的行う情報交換のときにも「この町の猫、黒系多いですね。白系はほとんど見かけないですね」と戸惑ったように言っておられました。
それでも「白っぽい猫を見た」という目撃情報があれば、その場所に行って、確認をするということを、私とNさんは続けたのです。
しかし、行って確認をしてみると、白は白でも頭や胴体や尻尾の一部に柄や斑点がある猫ばかりであり、Rちゃんではありませんでした。
気が付けが、陽は暮れ、私の足の痛さも限界に達していました。
正直、私はこの時間帯になって(轢かれていたのは、やっぱりRちゃんだったんじゃないのかな・・・もし、そうならすごく無意味なことをしてるんじゃないかな・・・)と、ついマイナスなことが頭を過ることが増えていました。
それは表情にも出ていたようで、Nさんは「野村さん。僕のペースに合わせる必要はないんで、ちゃんと休憩もとってくださいね」と気遣うように言ってくださったのですが、私は根っからの負けず嫌いなんで、そういうふうに言われてしまうと「ぜんぜん平気。大丈夫です」と答えてしまうのです。
そんな私を見てNさんは「いえ、僕はこれが仕事なんで、慣れてますが、野村さん初めてなんで、無理したらもたないですよ」と優しく言ってくれました。
その時、私のお腹が「く~~」と鳴り、朝から何も食べていないことに気付き「ところでNさん、お腹減ってないですか?何か食べません?」と提案したところ、Nさんは即答で「僕は捜索中は食べないんです」と言われたのです。
「え?そうなんですか?」と、私は少し驚いて聞くと「はい。食べるとリズムが悪くなるんです。ですので、その日の捜索が終わるまで食べないようにしてるんです」とNさんは笑顔で言いました。
そしてNさんは「野村さんちょうどいいんで、食事とって少し休憩してください^^僕はもう一度、公園方面を探してきますんで」と言い残し、Nさんは、そのまま歩いて行かれたのです。
リズム・・・
そう言えば、以前、Nさんは「迷子のペットを探すのに一番大事なことって何ですか?」という私の問いに「まず『必ず見つける』という信念を持つこと。そして、その信念を持ったまま、どんな状況でも心が折れることがなく、一定のリズムで探し続けることが大事なんです」と言っておられたことがありました。
さらに「あえて、僕が他の探偵より優れているところがあるとすれば、その『一定のリズムで探し続けれる』忍耐力じゃないですかね」と、自分を分析されていたのですが、まさしく、Nさんは、この日も、それを実践するような捜索活動をされていたのです。
マンションの花壇に腰かけた私は独り残されたような気持ちで、歩いて行くNさんのマラソン選手のようにシェイプアップした後ろ姿を見つめながら、そんな会話を思い出していました。
「こんな活動を毎日してるから、あんな体つきになるんやろな・・・」と私は独り言を言った後、自らを奮い起こすように、自分の足を「パン!」と叩き、再び強い気持ちを持って捜索を続けることにしたのです。
そして、Nさんが歩いて行った反対側を歩いて行くと、ヤンチャ少年達が、バイクを止め、地面に座り込んでたむろしている姿が見えました。
昼間の町の住民は主婦の人達が中心ですが、夜の街をを知り尽くしているのは彼らのようなヤンチャ少年であります。
「何か良い情報が聞けるかもしれない」と思った私は少年達の輪の方に向かって歩いて行きました。
少年達との距離が5メートルをきったとき、輪の中心にいたリーダー格の少年が私の存在に気付き、スクっと立ち上がり、敵意を感じるような眼差しで私を見据え、それにつられるようにして、他の少年達も立ち上がりました。
(なんか勘違いされてるな。。。)と感じつつ、私は構わず少年達の輪の中に入り、リーダー格の少年に「ちょっとごめんなさい。実は猫を探してるんだけど、この猫を見かけたことのない」とRちゃんの写真を見せたのです。
そう言われた少年達は「へ?ねこ?」と、敵意ビンビンの表情から、あどけない少年の顔になって「え?猫を探してるんですか?」と私の顔を見上げました。
「うん。そうやねん。この猫見たことない?真っ白な猫やねんけど」と私が言うと、少年達は緊張感から解放されたのが原因なのか、私が猫を探しているギャップがおかしかったのかはわかりませんが、人懐っこい笑顔になって「どれどれオレにも見せて」と争うようにRちゃんの写真を食い入るように見てくれたのです。
もしかして何か知ってるかもと、期待したのですが、やはり「黒猫なら公園の方とかにいっぱいおるけど、白は見たことない」という、結果でありました。
「そう・・・でも、みんなありがとうね。もし、見かけたらここに電話ちょーだい」そう言って私は少年達にビラを手渡して立ち去ろうとしたとき、リーダー格の少年が「ていうか、僕らも一緒に探しましょうか?手伝いますよ」と嬉しいことを言ってくれたのです。
他の少年達も「ええな!」「手伝おうぜ!」「探そ探そ」と同調するように言ったのですが、少年達の中でも比較的、お勉強が得意そうな副リーダーっぽい少年が「オレらみたいなのが手伝ったら逆に迷惑なるで。俺らが捜してる猫と知ったら逆に誰も言ってくれへんなるって」と言いました。
副リーダーっぽい少年にそう言われたリーダー格の少年は「それもそうやな^^俺らのこと嫌いな奴多いから、この猫に仕返しされたらかわいそうやな」と言い、皆も「ありうるな・・・」と笑っていました。
「気持ちだけいただいとく。みんなホンマにありがとう。」と私は頭を下げ、少年達も「見たら絶対に連絡します」と励ますように言ってくれたのです。
少年達に見送られながら、Rちゃんの姿を追って、私はは再び夜の町を歩き出しました・・・
ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。
プレシャスコーポレーション
野村圭一
