「時間を止める」生前と変わらぬ姿のままで~4

リビングで、静かに涙を流す娘さんとお母さんの姿を前に、私は無言のまま、視線を下に落としました。

その時、インターホンが鳴り、お母さんが「お父さんと○○(息子さんの名前)が帰ってきた」と言って、玄関先に向かわれたのです。

 

玄関先ではお母さんとお父さんの会話が聞こえてきたのですが、すぐにリビングのドアが開きお父さんが入ってこられ「おお帰ったか。お帰り」と娘さんに声をかけられました。

 

お父さんと息子さんは仕事に行かれてたので、旅行から戻った娘さんとは、このときが久しぶりの再会であったため、お父さんが娘さんに「お帰り」と言われたのです。

娘さんは「ただいま」と笑顔で言った後「ごめんね・・・こんなことって知らんと旅行行って・・・」と申し訳なさそうに言われたのですが、お父さんはネクタイを外しながら「かまへんねん。せっかくの旅行や。Pもわかってくれるよ」と優しい父親の顔で、そう言われたのです。

 

そして、お父さんは、続けるように「すぐに報せようとも思ったんやけどな、お母さんと相談して、帰ってくるまで待つことにしたんや」と言った後、私の方を向き「葬儀屋さんですか?」と訊ねられたので「はい。プレシャスコーポレーションの野村です」と、私はその場で頭を下げて自己紹介をしました。

 

お父さんは「えらいPのこと、あんじょうしてくれてありがとうございます」と笑顔で言ってくださった後「しかし、あれ、どないな仕組みですんや?氷も電気も使わんと、あないに綺麗に出来るんですな」と、Pちゃんの安置衣装品のことを、感心するようにして言われたので「はい。今は何でも優れた用品があるので、我々も助かるんですが、簡単に説明すると、外気と完全にシャットアウトするだけの仕組みなんですよ。それだけで10日から2週間は綺麗な状態を保てるんです」と私は説明をしました。

 

お父さんは二度ほどうなずいた後「そうでっか・・・でもまあ、娘に綺麗なPを見せてあげることができたんで、ほんまに感謝してます」と感慨深い顔をされて、そう言われたのです。

 

私とお父さんの会話を聞いておられた娘さんも、同調するように「私も帰って見たときビックリしました・・・お母さんから電話で聞いていたんですけど、やっぱり夏やし、四日も経てば、きっと、それなりの状態になってるんやろうなって思ってたんです・・・だから見るときも覚悟して見たんですけど、本当に時間が止まったみたいに綺麗な姿やったんで・・・思わず中から出して、抱きしめたんです・・・」と涙を流されました。

 

それを聞いたお父さんは「今、Pはあっこ(安置衣装品)から出てるんか?」と娘さんに訊ね、娘さんはハンカチで口元を押えながら、穏やかな表情でお父さんを見て、うなずきました。

「そうか。ワシも抱かせてもらおう」と、お父さんは奥のソファーの方に行かれ、息子さんも後を追うようにしてPちゃんのもとへ行かれたのです。

 

お父さんと息子さんは、Pちゃんが亡くなったとき、すでに仕事に行かれた後であり、帰られたときには、私が安置衣装品を施した後であったので、Pちゃんが息を引き取ってから、直に抱くのは、このときが初めてであったのです。

 

そういう意味では、このとき、お父さんと息子さんも、初めてもてたPちゃんとの別れの時間でもあり、お父さんと息子さんは交代するようにして、Pちゃんを優しく抱きしめ、顔を寄せながら「P・・・ありがとうな・・・」とお別れをされていました。

 

それを見ていたお母さんも「私も抱かせて」と輪の中に入り、息子さんからPちゃんを受け取った後「P・・・P・・・」とPちゃんの名前を何度も呼びながら抱きしめられたのです・・・

 

その間、娘さんはその場に座ったまま、そんな家族の姿を優しい眼差しで見つめておられたのですが、私は「娘さんは抱いてあげなくていいんですか?」と訊ねたところ「さっき、葬儀屋さんが来るまえ、ずっと抱いていたんで・・・」と笑顔で言った後、遠くを見るような目をされて「そうか・・・私が帰ってくるまで、Pはあの中(安置衣装品)に居たから。みんなは直接、触れることも出来なかったんや・・・」と、静かに涙をながされたのです。

 

私の目には、娘さんが、このとき流した涙は、言わば家族への感謝の涙のようにも見えました。

 

家族から一人離れ、静かに涙を流す娘さんに、お母さんがPちゃんを抱いたまま歩み寄って来られ「もうすぐお別れやで・・・あんたも、最後にもう一回、抱いてあげ」と優しく言いながら、そっとPちゃんを娘さんに手渡しました。

 

お母さんからPちゃんを受け取った娘さんは、肩を揺らすようにして泣かれ、その光景を目にした他の家族の目にも涙が滲んでいました。

 

娘さんのすぐ近くに座っていた私は、自分の存在だけがが邪魔なように感じ、御家族から距離を置くようにして、リビングの出入り口付近に移動しました。

 

家族の事情で、亡きペットを数日間安置する。

そのことを自然の摂理や宗教的な観点から見たとき、批判的な意見を持たれる方もいるかもしれません・・・

 

しかし、私は代わる代わるに優しくPちゃんを抱きしめてお別れをされているYさん家族にお姿を見て、何よりもPちゃん自身が喜んでいるように感じたのです。

 

不謹慎ではありますが、私は暫しの間、そんな御家族を笑みをこぼしたまま、見つめていました・・・

 

 

ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。

 

 

 

 

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一



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