「悲しみの対面」生前と変わらぬ姿のままで~3
そして、四日後の朝・・・
Yさん家のお母さんから「すいません。急で悪いんですけど、今日の夕方くらいに火葬お願いできますか?」と電話がありました。
電話を受けた私は「今日ですか?それは構いませんが、娘さんが戻られるのも確か今日じゃなかったですか?戻られてすぐにご火葬されるんですか?」と確認するように訊ねたところ「はい。今日の昼には帰ってきやるんです。それでね・・・」と、お母さんは、そこまで話されて言葉を詰まらせたのです。
私は「はい」とだけ返事し、お母さんの次の言葉を待ちました。
お母さんは数秒ほどの沈黙の後、気持ちを切り替えるように「すいません」と言った後「それでね、昨日の夜、娘から『明日の昼には帰るね♪何か変わったことなかった?』って聞かれたもんで、私、とっさに何も話せなくなってしまったんです・・・それで、娘が不審に感じたみたいで、心配するように『どうしたんお母さん?何かあったん?』って聞くもんですから、黙ってること出来なくなってしまって、P(チワワちゃんのイニシャル)が死んでしまったんよ・・・って言ったんです・・・」とお母さんは震える声で、つらい経緯を話してくださったのです。
「そうだったんですか・・・お母さんも、つらかったですね・・・」と私は話しかけるようにして言いました。
ペットの死を最初に知ったとき、他の家族に報せるのは、本当につらい事であります。
ましてや、家族の中でもそのペットちゃんと一番、関係性が深かった家族に報せるのなら、なおさらであります・・・
お母さんはしばらくの間、声を殺すように啜りないていらしたのですが、私はその間、受話器を握りしめたまま、お母さんが落ち着かれるのを待ちました。
少しして、お母さんは「すいません。それでね、娘にもね、葬儀屋さんがゆっくりお別れできるように、後、一週間は家に置いとけるように綺麗に処置してくれはったよって説明したんですけどね、娘が言うにはね『私が帰ってくるまで待ってくれたんやし、可哀想やから早く神様のところへ逝かせてあげたいから』って今日の夕方にね、火葬をお願いしたいって言うんです・・・」と娘さんの気持ちを代弁するようにして言われたのです。
「そういうことだったんですか・・・わかりました。では、そのようにさせてもらいます」と、とりあえず私は承諾をした後、「ところでお母さん。Pちゃんは綺麗な状態を保ててますか?」と訊ねました。
「はい。御陰様で綺麗です。あの日のままの状態です。」とお母さんが返事をされたので、私は「娘さんも、おそらくそのような状態で安置されているとは思ってらっしゃらないと思うんです。ですので、Pちゃんの姿を見られて、もしかしたら、もう少し一緒に居たいって思われるかも知れないので、そのときは、すぐに電話をくださいね。火葬は翌日以降に延期されても構いませんので」と伝えました。
お母さんは「わかりました。ありがとうございます。その時はすぐに電話しますね」と言われ、電話をお切りになられました。
電話を切った後、悲しい気持ちで日本に戻る娘さんと、その娘さんの帰りを自宅で待つお母さんの気持ちを思い、私は切ない気持ちになりました・・・
そして、その日の午後二時過ぎ。
再びお母さんから電話があり「娘が帰ってきましてね、それでPとも対面して、野村さんが言ったように伝えたんですけど、やっぱりね、置いておくほうが可哀想やからって言いやるんです。ですので、予定通りお願いできますか?」と涙声で言われたので、私は「わかりました」と返事をし、夕方の四時にYさん宅を訪問させてもらうことになったのです。
我々、葬儀屋が飼い主さんより先にペットの死を知るというのは、このようなケースを除き、ほとんどありません。
それ故に、私はいつもとは少し違う、重い気持ちでYさん宅に向かうことになったのです・・・
Yさん宅には四時少し前に到着しました。
インターホンを押すと、お母さんが出迎えてくださり「どうぞ」とリビングに通されました。
静かにリビングのドアを開けると、前に私が安置させてもらった場所にPちゃんの姿は無く、ふと視線を先に向けると、奥のソファーに背中を向けた状態で座る娘さんの後ろ姿が目に入ったのです。
おそらくPちゃんは、その娘さんの視線の先にいるようだったので、私は歩み寄り、手を合わせさせてもらおうと思ったのですが、娘さんの背中からは、言葉では表せないほど、悲しみが滲み出ており、私は、近づくことを躊躇ってしまったのです。
そして、私は、娘さんの腰かけてるソファーから少し距離を置き、静かにその場で正座をしました。
私の後からリビングに入られたお母さんが娘さんに近づき「葬儀屋さん来てくれはったよ」と、静かな声で声をかけられ、娘さんは小さくこちらを見るそぶりをされた後、すぐに、うつむくように前を向きながら手に持っていたハンカチで涙を拭っておられました。
娘さんはハンカチで、何度か目元を押えるようにされた後、ソファーから立ち上がり、こちらに歩み寄って来られ、私の前に正座をされました。
そして「Pを綺麗にしてくださってありがとうございます。亡くなって四日経ってるって母から聞いてたんで、あんな綺麗なPに会えるとは思ってませんでした。本当にありがとうございます。」と深く頭を下げてくださったのです。
「いえ、とんでもございません」と私も頭を下げた後「綺麗な姿のまま会わせてあげたいと願う御家族のお気持ちだと思います」と、私がお母さんから受け取った想いをそのまま娘さんに伝えたのです。
私がそう言ったとき、娘さんは堪え切れず、涙を流され、娘さんのすぐ後ろに座られたお母さんの目も潤んでいました・・・
ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。
プレシャスコーポレーション
野村圭一
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