「確信」再会を実現してもらうべく~探偵さんと同行した二日間~9

かなり大きな声でNさんの名前を呼びましたが、Nさんからの応答はなく、ついさっきまで確認できたNさんの持つ懐中電灯の灯りも、この時は見えなかったのです。

どうやらNさんは空き地で見かけた猫を追って反対側のマンションの方まで行ったようでありました。

 

その時、白い猫と私の距離は約30メートル。

白い猫は自分の前足や胸元を舌でなめて毛づくろいをしていました。

 

その光景を見て私は(Rちゃんだ・・・)と心の中でつぶやきました。

もちろん私はRちゃんと面識がないので、知ってるのは、あくまでも、写真のRちゃんだけだったのですが、なぜかこの猫がRちゃんであると強く思ったのです。

この二日間、全身真っ白な猫を目撃したことが無かったのが、そう思った理由かも知れませんが、それ以上に自分の全身の毛が逆立つような独特の緊張感が、Rちゃんだと感じた最大の理由だったように思います。

 

私は白い猫から目を逸らさないように心がけながら、時折、空き地の方に目をやり、Nさんの姿を探しました。

その時、空き地の反対側にある、さらにその奥のマンションの地下駐車場のあたりでNさんの懐中電灯の灯りが見えたのです。

 

叫んでも届かない距離だと判断した私はスマホでNさんの携帯に電話をかけました。

しかし、不運にも、その駐車場は少し地下になっていたことから、Nさんの携帯に電波は届かなかったのです。

 

焦りと苛立ちの中、四回、電話をかけたのですが、スマホから聞こえてくるのは「電波の届かない所におられるか、電源が入ってないのでおつなぎできません」という無情なアナウンスの連続で、思わず私は「もうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーNさん!何やってんだこんなときに!」と取り乱してしまいそうになりました。

 

幸い、その間、白い猫は同じ位置で、くつろぐようにしながら、毛づくろいを続けていたのです。

見つけるまでのアドバイスはNさんから聞いていたのですが、見つけた後の対処法がわからない私は(どうしたらええんやろか・・・いきなり近づいて逃げられたらせっかくのチャンスが無駄になる・・・)と判断に迷いました。

 

その時、白い猫は毛づくろいを止め、再び歩き出したのです。

 

Nさんに電話をかけるのを諦めた私は覚悟を決め、自分一人で白い猫を捕獲する決心をし、おどかさないようにゆっくりとした足取りで白い猫に近づいていったのです。

白い猫との距離が10メートルを切ったときでした。

私の存在に気付いた白い猫は、歩くのを止め、私の方に顔を向けました。

リラックスしてた様子から、明らかに緊張した面持ちに変わった白い猫は、警戒するように私の目をじっと見つめ、もし、私がこれ以上、近づこうものなら、逃げ出すぞと言わんばかりに体を硬直させたのです。

 

(どうしよう・・・)

私は内心、どうしていいのかわからず、すごく焦っていました。

相変わらずNさんの姿も見えないままでした。

そんな緊張が伝わったのか、白い猫は私の視線を避けるようにしながら、工場の門をくぐり抜け、敷地内に入ってしまったのです。

 

慌てて私は門の前まで行き、白い猫に向かって(待って。お願い待って)と心の中で話しかけました。

この時、白い猫との距離は門を挟んでいたとはいえ、3メートルまで近づいたのです。

 

私の呼びかけに白い猫は歩みを止め、こちらを振り返りました。

 

この時、私は初めてハッキリと白い猫の顔を見たのですが、その瞬間、思わず「ああ・・・」と声を漏らしました。

振り返った白い猫の目には、たくさんの目ヤニが溜まっていたのです・・・

 

私の頭の中で、数時間前に飼い主さんと一度だけ交わした短い会話「Rはね、両目の下を手術したことがあって、その手術痕に目ヤニが溜まってしまうんです。不器用で甘えん坊だから自分で取ることが出来なくって、いつも、私がとってあげてたんです・・・今ごろ、きっと目ヤニだらけになってるはずですわ・・・」の言葉が甦ってきて、涙が出そうになりました。

いえ、あの時は必死だったので気付かなかっただけで、もしかしたら、本当に泣いていたのかも知れません・・・

 

 

そして、この時、私ははっきりと確信したのです。

 

この白い猫はRちゃんだと。

 

 

ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

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