「有力情報」再会を実現してもらうべく~探偵さんと同行した二日間~6
初日の捜索活動を終え、自宅に戻った私は靴をぬいだとき、左足の靴下が血が滲んでいることに気付きました。
そっと靴下をぬいで足の裏を見ると、水ぶくれが三つ出来ていて、そのうちの一つが潰れて出血していたのです。
私は学生時代、バスケットボールをしていたので、足の裏の皮の分厚さには自信があったのですが、たった一日でこの有り様では先が思いやられました。
そのまま、風呂場に向かい、水で血を洗い流した後、縫い針で残りの二つの水ぶくれに穴をあけて水を抜き、絆創膏をはりました。
ふ~と息を吹きかけただけでもヒリヒリとするぐらい痛かったので(明日、歩けるかな・・・)と心配しながら、一日の出来事を思い返しました。
本当にいろんなことがあり、とても、今日一日に起きたようには感じられず、やはり、見知らぬ町の中から一匹の猫を探し出すというのは大変なことだと私は感じながら、私はNさんが別れ際に言ったことを思い出していたのです。
別れ際、Nさんは地図を広げて、Rちゃんが居ると考えられる行動範囲を、さらに小さく絞り込んだ後、力強く「今日一日の捜索の結果、ある程度、町の特徴は把握できました。Rちゃんは必ずこの円の中にいます。」と断言するように言ったのです。
気力を失いかけていた私を勇気づけようとして言われたのか、それとも、Nさんの長年の経験からそう言われたのかは、わからなかったのですが、そう言ったNさんには確信めいたものがあるように見えました。
その時、私は当たり前の、ある事実に気付いたのです。
それは、どういうことかというと、Nさんは、いつも、このような地道な活動をたった一人でやっておられるという事実であります。
実際やってみたからわかるのですが、見知らぬ町で迷子のペットを探すという捜索を一人でやるのは、かなり孤独で、過酷な活動でもあります。
それを坦々とやり続ける忍耐力は並大抵ではありません。
それが本職とはいえ、Nさんの忍耐力は、この日、一日だけ同行しただけで、充分に伝わりました。
どんなことがあっても、Nさんの心はけして折れることはなかったのです。
Nさんは、いつも、たった一人でこんな活動をされているんだな・・・
そんなことを考えているうちに、私はいつのまにか深い眠りに落ちてしまいました・・・・
朝、体に痛みを感じ目が覚めました。
どうやら昨夜、風呂も入らず部屋でそのまま眠ってしまったようで、体の節々が痛みましたが、すぐにシャワーを浴びて足の状態を確認しました。
足の裏はまだ痛みましたが、絆創膏を貼りなおし、サポーターを巻いて、その上から靴下を履くと、痛みは半減し、歩くことは問題ないと感じました。
その時、Nさんから電話があったのです。
「野村さんおはようございます。昨日はお疲れ様でした」と、元気な声で挨拶をしてくださったので、私も「おはようございます!」と元気な声で挨拶を返しました。
Nさんは「野村さん。朝から良い情報が二つあります」と、笑いながら言われたので「ホントっすか?どんな情報ですか?」と私は思わず電話を持ったまま立ち上がりました。
「まず、一つ目は轢かれて死んでいた猫なんですが、飼い主さんと役場に行って確認したところRちゃんではなく別の猫ちゃんでした」と、報告をしてくださったので「そうですか・・・とりあえず良かったですね」と私は言いました。
「はい。まずはホッとしました。それで二つ目なんですけど、野村さんが聞き込みに行ってくださった宗教施設の事務所の人から有力な情報があったんですよ^^」とNさんは言われたのです。
Nさんが言った宗教施設とは、飼い主さん宅から二筋裏に事務所を構えている宗教団体のことで、私は前日、この事務所を訪れ、聞き込みをしたのですが、事務所にいらした高齢の女性は「夜中になるとよく、色んな猫の声はするけど、わざわざ見たことないからこの猫がおるかどうかはわからへん。どっちにしても昼はおらんで」と言っておられたので、私はビラを置いてきたのです。
「どんな情報ですか!?」と、私が聞くと、Nさんは「今日の明け方近くに猫が争う声がしたんで、わざわざ、外に出て確認してくれはったんですよ。そしたらね、黒猫と真っ白な猫が威嚇し合ってらしいんですけど、白い猫はビラのRちゃんの写真に似た、全身真っ白な猫だったらしいんですよ」と言いました。
「ほんまですか!Nさんそれってかなり有力じゃないですか?」と、私が興奮を抑えれず言うと、Nさんも喜びを隠さず「そうです!Rちゃんの写真を見た後の情報なんで、かなり信憑性も高いと思います!これでもっと範囲を絞れますよ!」と言ってくれたのです。
私は居ても立っても居られなくなり「わかりました!今からすぐそっち向かいます」と言ったところ、Nさんは「いえ、野村さん。僕もさっきその宗教施設に行って直接、情報提供をしてくださった人に会ってきたんですけど、もう猫はいませんでした。おそらく、すでに隠れ家に戻って身を潜めてると思います。ですので、張り込むとしたら、夕方から深夜、早朝までが勝負なんで、夕方までに現地に入ってくれたらいいですよ。僕も徹夜に備えて、昼過ぎまで体を休めますんで」と言われました。
「そうですか・・・わかりました。じゃあ夕方前に行きますんで、何かあったらすぐに知らせてください」と私は返事し、電話を切ったのです。
すぐにでも、現地に飛んで行きたかった私ではありましたが、Nさんに言われた通り、少し体を休めた後、一度、プレシャス会館に顔を出し、支配人にから昨日の業務内容の報告を受けた後、昼食をとりました。
そして、正午過ぎ、私はもう一度、自宅に戻り、着替えてから現地に向かったのです。
この日、私は、昨日の失敗を繰り返さないよう、少しは爽やかに見える淡いピンクのシャツを着て現地に入りました。
現地でNさんと合流し、もう一度、情報を整理しながら、今日一日の作戦を練ったのです。
私はNさんに「昨日の黒い服装は住民の人に不信感を与えると感じたんで、今日はピンクのシャツにしたんですよ」と服装の説明をすると「野村さん、いいとこに気付きましたね。そういうの大事なんですよ。実は僕のこの帽子。これにも意味があるんです」とNさんは例のドナルドダックのような帽子を指さし、笑顔で言いました。
「そうなんですか?どんな意味があるんですか?」と私が訊ねると、Nさんは「聞き込みをするとき『すいません。少し聞きたいことがあるんですけど』と言いながらこの帽子をバサってとると、相手の方に低姿勢をアピールできるんです。そうすることによって、相手に安心感を与えて、スムーズに聞き込みが出来るんです」と説明してくださったのです。
「へ~そうだったんですか。僕ね、なんでそんなモコモコした大きな帽子かぶってはんねんやろって、ずっと不思議だったんですよ。もしかしたら大切な人からのプレゼントか、お爺ちゃんの形見なんかなって思ってました」と私が感心しながら言うと、Nさんは「形見って^^あはははは。これも捜索の必須アイテムなんですよ」と笑っておられました。
「じゃあ今日も頑張りましょう!」とNさんは言われ「はい!必ずRちゃんを見つけましょう!」と私は返事をしました。
こうして、二日目の捜索が始まったのです。
ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。
プレシャスコーポレーション
野村圭一

