心に空いた穴
ペットを失ったとき
すぐに別のペットを飼われる人と、二度と飼わない人に分かれるそうです。
前々回のブログで自身のペットロスの経験を書かせてもらいましたが、私は後者でした。
少しでも早く心に空いた穴を埋めるべく新たにペットを飼われる人もいれば、二度と同じ悲しみを経験したくないという理由から飼われない人もいます。
理由はそれぞれだし、これは個々の生活環境や価値観の問題でありますから、前者であろうが後者であろうがどちらの選択が正しいとかの問題ではないと私は思っています。
大阪北区中崎町のキャバリアのソラちゃんが病気で急死したとお電話があったのは深夜の1時でした。
依頼者様のご都合を聞き、その日の夕方に葬儀をプレシャスコーポレーションで承ることになりました。
予定のお時間の少し前に依頼者様のマンションに到着し、インターホンを押しました。
少し間があった後、依頼者様の「どうぞ」という声とともに正面玄関のロックが外れる音がし、お部屋までお伺いすることになりました。
お悔やみを申し上げた後、部屋を通された私はリビングに設けられたお手製の祭壇に横たわったソラちゃんに歩みより手を合わせました。
一人住まいの依頼者様にとって唯一の家族だったソラちゃんとのお別れ。
すでに冷たくなったソラちゃんにブラッシングを続ける依頼主様はその現実をどう受け止めればよいのかさえ見失っておられるような状態でした。
声をかけるタイミングすら見つけられず数分が経過したときに依頼主様の携帯電話がなり、職場の同僚らしき方にソラちゃんの死を涙ながらに伝えていました。
電話を切られた依頼主様が「すいません」と声をかけてくれたので、私は頭を下げました。
その後、30分ほど生前のソラちゃんのお話を聞かせてもらい、依頼主様と一緒に部屋を出て、玄関先にとめた火葬車に乗り、私と依頼者様と依頼者様に抱かれたソラちゃんはご指定の火葬場所である近くの公園まで向いました。
火葬炉の中にいつも食べていた物と生花を収め、扉を閉じる前に私が「構いませんか?」と尋ねたとき、依頼者さんはハンカチで口元を押さえ黙ったまま頷きました。
火葬の間、依頼者様が私に「キャバリアはすごい寂しがりやな犬なんです・・・・そんなことも知らんとショップでソラを見て、一目で気にいって・・・」
そこまで話した依頼主様は泣き崩れてしまいました。
私は歩み寄り車の中で待つように促したのですが依頼者様は大丈夫だと火葬炉から離れようとしませんでした。
依頼主様は中断してしまった話を続けるように
「そんなことも知らんと、仕事のときずっと留守番させてたんです。ソラは私に飼われて可哀想や・・・・いつも誰かが居てくれる家で飼われたほうがよかったはずや・・・」
そして絞りだすような小さな声で「だから最後ぐらいそばに居てあげたいんです」と言いました・・・
セレモニーを終え、依頼者様のマンション前まで帰るとき、助手席でソラちゃんのお骨を納めた骨壷を大切そうに抱いている依頼者様に何かお声をかけようとしたのですが、どの言葉も口にすれば軽く感じられるように思え、結局、私は何一つ言葉をかけてあげることができませんでした・・・
玄関前に到着し、挨拶を交わし、その場を後にする私の運転する車に力なく頭を下げて見送って下さる依頼者様の姿をバックミラー越しに見たとき、胸が詰まり、思わず目頭が熱くなりました。
そして、これから訪れる本当の悲しみと向き合っていかれる依頼者様のことを考えると、いたたまれない気持ちになると同時に
「ソラちゃんの依頼者様は前者、後者、どっちにになるのだろう・・・」
そのことを考えられずにはいられませんでした。