ペットたちが死の間際にとる行動・・・

我々が葬儀に立ち会った際、生前のペットちゃんの思い出話をいろいろと聞かせてもらいます。

 

中でもペットちゃんが死の間際、いつもと違う行動をしていたという話を、どの飼い主さんも口にされます。

 

「いつも私が家を出るとき玄関まで来て見送ってくれるのに、ずっと居間から動こうとせず、出て行く間際、悲しい声で鳴いていた」

 

「やたらにおとなしく、じっと私の顔をみるのです」

 

そういったペットちゃんのいつもと違う行動はきっと飼い主さんへのシグナルなんだと私は思っています。

 

言葉を話せないペットたちは彼らなりに何らかの方法で自分の死が近いことを家族に訴えているのでしょう・・・

そのような話の中で私が一番、心に残ったお話を紹介させていただきます。

 

 

 

寝屋川市のマルチーズのクックちゃん。

享年16歳

 

クックちゃんは生まれて間もない頃、自宅の階段から転げ落ち、腰と後ろ左足を複雑骨折しました。

飼い主さんはすぐに病院に駆けこみ、クックちゃんは手術をうけ、一命はとりとめたものの、骨折の影響で歩行障害が残りました。

 

怪我をさせたのは目を離した自分の責任だと、飼い主さんは自分を責め、クックちゃんの面倒を一生みようと心に決めたそうです。

 

お一人暮らしでお子様に恵まれなかった飼い主さんはクックちゃんを我が子のように大切に育てておられました。

 

クックちゃんは怪我をしたトラウマからか自宅の階段には近づこうとはしなかったようです。

 

階段というより、階段の最下段の半径50センチ以内にも絶対に入ろうとしなかったようで、そんなクックちゃんの気持ちを察した飼い主さんも生活するなかで、ほとんど2階には上がらず、1階の居間と台所のみで生活ができるように寝具も1階に移したそうです。

 

飼い主さんが唯一、2階に上がるのはベランダに洗濯物を干すときだけだったようなのですが、そんなときクックちゃんは1階から階段を上がっていかれる飼い主さんに向かって寂しげな鳴き声をあげていたらしいです。

 

歩行障害と階段のトラウマが残ったとはいえ、クックちゃんは優しい飼い主さんのもと、温かい家庭の中で幸に暮らしていたと思われます。

 

クックちゃんが16歳の誕生日を向かえた数日後、よく晴れたその日、飼い主さんはたまった数日分の洗濯物を干しに2階に上がろうとしました。

 

飼い主さんが2階に上がるときクックちゃんが鳴くのはいつものことだったのですが、その日はいつも以上に大きな声で鳴いていたらしいです。

 

気になったものの、たまった洗濯物を両手にかかえたままだったので、いったん2階のベランダまで運び、階段のところまで戻った飼い主さんは1階にいた、クックちゃんの行動を見て我が目を疑いました。

 

クックちゃんは悪い下半身を引きずるよにしながら前足と口だけを使って事故後、絶対に近づこうとしなかった階段を3段ほど、上がってきていたのです。

 

驚いた飼い主さんは急いで階段を降り、クックちゃんを抱き上げ、1階のいつもクックちゃん愛用のクッションの上におきました。

 

このクッションはクックちゃんが2番目に好きな場所で、眠るときはいつもここでした。

無理をして階段を上がったせいかクックちゃんはぐったりとしていて、異変に気づいた飼い主さんはクックちゃんがいつも通っていた病院に行く準備をしようとしました。

 

ところがクックちゃんは最後の力をしぼりだすように、クッションから這い出し、飼い主様の膝の上に擦り寄ってきました。

 

すぐさま飼い主さんがクックちゃんの両脇をもって顔を覗き込むように抱きかかえたとき、すでにクックちゃんの意識はなく、鍵も閉めずに病院に駆け込んだ飼い主さんはクックちゃんの主治医の医師により、クックちゃんの死を告げられたのです・・・

 

クックちゃんの葬儀を担当した私に飼い主さんは終始、涙声でこの話をしてくださり、最後に「クックは怪我させた私を恨んでるやろか・・・可哀想なことをした・・・不幸な運命を背負わせた・・・」と言っておられました。

 

葬儀を終え、飼い主さんの自宅を出る間際、私は「怪我をして不自由であったかもしれませんが不幸ではなかったと思います。それに、もし、クックちゃんが恨んでいたなら・・・」ここまで言って思わず涙に言葉がつまりました。

 

気を持ち直し「もしクックちゃんが恨んでいたなら最後の場所に膝の上を選ばなかったと思います」

そう私は伝えました。

 

気休めとかではなく、本当に私は心からそう思いました。

 

なぜなら飼い主さんの膝の上はクックちゃんが1番好きな場所だったんだから・・・

 

プレシャスコーポレーション

野村圭一

 

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