「再会の日まで」姿を変えて帰ってきたペット~最終回
ジンちゃんを探しに出かけたときに感じた空しさの理由・・・
それは、今、思うと、あの時「人間には逆らえない運命というものがある」ということを痛感したからであり、ジンちゃんが帰って来ないのも、ソラちゃんが不思議な巡り合わせで家に迎え入れることになったのも、運命だとすれば、自分はそれを受け入れるしかないと、心の奥底で理解したことにより、自分の行動が無意味なように感じたのが、その理由であったのだと思ったのです。
あの時、頭では理解していなくても、心がそのことを強く感じていたのかも知れない・・・
それが、脱力感になって表れたように思えたのです。
おそらく、その感覚は、ソラちゃんを警察署から連れて帰ってきたときから無意識に感じていたことであり、それ故に、涙が出たのかもしれません。
もし、縁があるなら、またジンちゃんに会える日が来るかも知れないし、会えないのなら、そのような運命であると、Hさんは思ったそうです。
そして、さらに、それから三年の年月が流れたのでした・・・
その日の朝はいつもと違っていました。
朝になれば聞こえてくるソラちゃんの囀り(さえずり)もゲージ内を移動したときに鳴る音が聞こえなかったのです。
眠気まなこで寝室を出てリビングのゲージに目をやったHさんはソラちゃんの姿がないことに気付き、慌てふためきました。
ゲージに近づいてみると、ソラちゃんはゲージの底で横たわっていたのです。
すぐにソラちゃんをゲージから取り出したHさんの手に伝わってきたのは、冷たくて固い感覚でありました・・・
ソラちゃんを抱いたまま、寝室の旦那さんを起こしたHさんは、泣きながら悲しい事実を伝えたのです。
ここ数日、少し、食欲が落ちていたソラちゃんではありましたが、昨夜、眠る前に見たときは、いつものようにゲージの止まり木の上でHさんの顔を眺めていたそうです。
ソラちゃんは保護された鳥であったので、正確な年齢はわからなかったのですが、その日、ソラちゃんはHさん夫婦と過ごした四年の月日に終わりを告げるように、静かに息を引き取ったのです・・・
ソラちゃんのセレモニーは弊社プレシャスコーポレーションの会館で承ることになり、セレモニーを担当した私は、その席で、ジンちゃんがいなくなった日からソラちゃんが亡くなる日までの話をHさんから聞かせてもらったのです。
私がHさんから話を聞いたとき、最初に感じたのは(このような話は以外と多いんだな・・・)ということであります。
このような話とは、ペットがいなくなり、警察に届け出をした際、別のペットを引き取るという話であり、私が知っているだけでも、同じようなケースで警察からペットを引き取って飼っている人はHさんを入れて五人目でありました。
おそらく、警察も、短期間とはいえ、世話をしていたペットを殺処分されるとわかっているのに、保健所に渡すのはつらいことであるはずです。
だから、飼い主さんとはぐれたペットを保護したとき、なんとか処分をされないように、飼い主さんが迎えに来てくれるのを待つと思うのですが、期日まで飼い主さんが現れないときは、誰か引き取ってくれる人がいないものかと思案する中で、同じようにペットとはぐれ、探しておられる人に、提案する形でお話をされることもあるそうです。
ソラちゃんの火葬のとき、Hさんは「ソラと過ごすことになって、すぐ感じたのは、ソラはジンの意志のようなものを受け継いでいたというか、私の性格をちゃんと知ってる子だなと思ったんです」と仰っておりました。
そして、「うまく言えないんですけど、仕草とか鳴き声とか、もしかして、羽の色が変わったけど、ソラの中身はジンなのかなって、何度も思うことがありました・・・でも、そんな風に考えたらソラがジンの代わりみたいで、申し訳ないので、口にしたことはなかったんですけど、振り返ると、私はそう感じながら接していたような気がするんです・・・」と、Hさんは、そのように言った後、静かに涙を流されたのです・・・
先にも述べた、Hさんと同じような経緯で、別のペットを引き取った人達も、一応に同じような意味合いのことを口にされるのですが、それは経験したことのある人にしかわからないことなのかも知れません。
また、同じように、ペットを亡くした人が、何かの縁で、別のペットを迎え入れることになったとき、そのペットから亡くなったペットを感じることがあるそうなのですが、それらは、単なる人間側の錯覚や思い込みだけが原因なのでしょうか。
ペットが姿を変えて帰ってくる・・・
現実にはありえないことであるのは、私もわかっています。
しかし、私は、ペット葬儀の仕事を通じて、常識では計り知れないような事を幾度となく経験し、そのような話も「絶対に無い」とは思えず、むしろ今は、ありえる話だと思っている人間でもあります。
ソラちゃんのセレモニーを無事に終えたHさん夫婦は会館を出るとき、何度も頭を下げてお礼の言葉をくださいました。
後日、Hさんから、メールで、あらためて「良いお見送りができた」ことへの感謝の言葉をいただくと同時に、メールにはその後のHさんの近況のことも綴られていました。
Hさん夫婦は今はペットを飼わず、二人で静かな日々を過ごしておられるようなのですが、今でも、自然が多い場所では無意識に黄色と緑の翼を探すクセがついたと書いてありました。
そして、メールの最後に「いつの日か、ジンやソラと再会できる日が来るような気がしてます」と締めくくられていました。
メールを読み終えたとき、私は、その時、ジンちゃんやソラちゃんがどんな姿なのかはわかりませんが、いつか、本当にHさんはジンちゃんやソラちゃんに再会できる日が必ず来ると思いました。
プレシャスコーポレーション
野村圭一
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