「断念」叶わなかった願い 10
翌朝。
私は起きるとすぐにTVのスイッチを入れ台風情報を確認しました。
すでにYさんの住む四国では強風と高波の警報が出ており、明石海峡大橋も通行止めになっていたのです。
私は窓を開け空を見たのですが、大阪は嵐の前の静けさなのか、まだ荒れた様子はありませんでした。
しかし、時よりどんよりと生暖かい風が吹いていて、台風が近づいていることが感じられたのです。
午前9時、私は会館に着きました。
この時点ではいつもと変わらぬ朝であり、普段と同じように通勤する人達が町を行き交っていたのです。
比較的、大阪は台風に強い町であります。
大きな台風がきても、それほど被害は出ません。
しかし、同じ近畿でも太平洋側に面してる和歌山は、いつも大きな被害が出ます。
そして四国。
四国は太平洋に位置する島であり、台風の影響は大阪の比ではなく、毎回のように大きな被害が出ることで知られています。
会館の前で空を見ながら私は四国に住むYさんのことを案じていました・・・
そして、正午が過ぎた頃、雨が降り出し、突風が吹き荒れる頃、雨足が一気に強くなりました。
窓を閉めていても、時折、雨と風の唸り声が聞こえてきて、台風が大阪に上陸したのがわかりました。
雨が強風で白いカーテンのように視界を遮るように降り続いたのです。
そのとき携帯が鳴り、発信者はYさんでありました。
「もしもし」と私がすぐに応答すると、Yさんが少し切羽詰まったような声で「野村さん・・・」と私の名を呼んだのです。
「Yさん、台風はどうですか?大丈夫ですか?」
私がそう質問すると、「はい・・・かなりひどい状況です。明石海峡大橋とか以前に家の近くの国道が浸水して通行できなくなりました。それに・・・」
Yさんはそこまで言って黙り込まれました。
「どうしたんですか?」
私がそう訊ねると、Yさんは「今、市から避難勧告が出たんです」と不安気にそう言われたのです。
「そんなにひどいんですか?」
私は窓から外を見ながら訊ねました。
大阪は雨と風が強く吹いていたとはいえ、お店や会社も通常通り営業していたので、大阪と四国の被害の差に驚くと同時にYさんの現在の状況を頭に浮かべたのです。
避難するとすれば地域の住民さんと一緒に近くの公民館や学校の体育館に行くことになるのかな・・・そこに亡くなったマニちゃんをを持ち込むのは難しいだろう・・・かといって、マニちゃんを家に置いておくのもYさんには出来ないはず・・・
そのようなことを瞬時に頭に巡らせながら、私は初めてYさんに断定的な言葉を告げました。
「Yさん。今回はやはり大阪に来るのは避けたほうがいいです。地元の葬儀屋さんが営業してる間にマニちゃんの火葬だけでも済ませてあげたほうがいいと思います」
私は語尾に力を込めてそう言いました。
そしてYさんは無念さを滲ませながら「・・・わかりました。そうします・・・」と、お返事をされたのです・・・。
ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。
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野村圭一
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