「抱く」二度 殺される 3
火葬炉の点火の瞬間に飼い主さんが泣かれることは、よくあることであります。
しかし、そのタイミングで「ありがとうございます」と、我々葬儀屋にお礼の言葉をかけてくださることは、それほど多いことではありません。
やはり、飼い主さんからお礼の言葉をいただくのは、火葬が終わり、お骨を収骨されたときがほとんどであり、それ故に、私はTさんが、なぜ、このタイミングでその言葉をくださったのかを、ちゃんと把握していませんでした。
それにもう一つ。
Tさんが今、流されてる涙には、単にペットとのお別れの涙だけではなく、何か別の感情もあるように、私には思えたのです。
それは、さきほど、猫ちゃんを連れにTさんが自宅に入られたとき、お母さんが言われた「前に別の猫を亡くしたとき、少しひどい扱いされましてね・・・」という事に関係があるのかも知れないと感じていました。
しかし、Tさんが猫ちゃんを抱いて戻られたとき、お母さんが、それ以上、話すのを止められたことから、その話はTさんにとって触れられてほしくないことであるかも知れず、私はあえて、何も聞かなかったのです。
そして、火葬が始まって15分ほど経過したころでした。
お母さんは一度、自宅に入られ、私はTさんと二人で火葬を見守ることになったのです。
そのときでた。
不意にTさんが「猫は好きですか?」と私に訊ねられたのです。
私は少し間を置いて「・・・はい」と返事をしました。
「そうですか。」
Tさんはそう言って少しだけ笑みを浮かべた後「でも、わかります」と、うなずかれたのです。
私は「何がですか?猫が好きなことがですか?」と訊ねると、Tさんはうなずいて、「さっき〇〇※(Tさんの猫ちゃんの名前)を渡したとき、抱いてくれはったやないですか?なんていうか、抱き方一つでわかるじゃないですか・・・そういうことって・・・」と言われた後、ふと寂しげな表情をされたのです。
抱き方・・・
我々、葬儀屋は最低でも一度は亡くなったペットちゃんを抱くことになります。
それは、火葬炉に収めるときなのですが、抱き方のことを飼い主さんから言われたのは、このときが初めてでありました。
いつも無意識にしていたことではあったのですが、それでも(優しく)とは心掛けていました。
Tさんが言ってくださった「ありがとうございます」という言葉は、このことだったのかも知れない・・・
私はそのように感じたのです。
ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。
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野村圭一
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