「和み」二度 殺される 2
Tさんのお母さんは私の耳元で「前に別の猫を亡くしたとき、少しひどい扱いされましてね・・・」と囁くような声で言われたのです。
予期せぬお母さんの言葉に、私は少しだけ驚き「そうなんですか?」と聞きお返しました。
お母さんはうなずき、さらに何かを言おうとされたのですが、そのとき不意に言葉を遮るようにして、口を閉ざされたのです。
見ると、Tさんが猫ちゃんを抱いて玄関から出てこらたところで、おそらくお母さんの行動から、この話はTさんの前ではしないほうがいい話なんだと私は感じ、それ以上は聞きませんでした。
Tさんに抱かれた猫ちゃんはキジトラのかわいい子でありました。
猫ちゃんのおでこに頬をつけながら、Tさんは目に涙を浮かべ、「お願いします」と私に告げられたのです。
私は猫ちゃんをTさんから受取り、そのまま専門トレイに優しく寝かせてあげました。
そして「構いませんか?」とTさんに訊ね、Tさんがコクッとうなずいたのを確認した後、猫ちゃんを火葬炉に収めたのであります。
猫ちゃんが火葬炉に収まる刹那、つらかったのか、Tさんは顔を背けるようにして視線を外されました。
そんなTさんの肩をお母さんは優しく抱き寄せるようにされ、Tさんは両手で口元を覆うにしながら涙を流されたのです。
点火のスイッチは私が入れました。
火葬が始まり、煙突から透明の靄が上がると、Tさんはその靄に合掌をされ、お母さんはそんなTさんの肩に手をやったまま少し不安気に煙突を見つめていらしたのですが、お母さんは本当に煙が出ないのかが、少し心配だったようで、何か珍しいものを見るような表情をされたのです。
火葬が始まって3分ほど経過した頃、お母さんが私に「これ、もう始まってるんですか?」と訊ねられたので、私は「はい。始まってます」と返事をしました。
するとお母さんはTさんの肩から手を離し、少し火葬炉の方に近づきながら「ほんまに煙が出ないんですね・・・」と感心されたように言った後、「すごいわ~~~」と唸るようにして腕を組まれたのです。
そんなお母さんが少し可笑しかったのか、Tさんは「もうお母さん・・・」と少し恥ずかしそうにような笑みを浮かべられました。
電話で問い合わせがあったときから、火葬が始まるまで、Tさんはずっと感情を殺しながら意図的に冷静さを保っておられたように、私には見えていました。
しかし、ここにきて、少しだけ緊張がほぐれられたのか、ペットを見送る悲しい時間の中であっても、初めてリラックスした表情を浮かべられたのです。
Tさんはゆっくりとした足取りで、火葬炉の前の私とお母さんに歩み寄るようにされ、ふ~と溜め息をついた後「時間はどれくらいかかるんですか?」と私に訊ねらてました。
「比較的、小柄な猫ちゃんなんで30分くらいですかね」
私がそう答えると、Tさんは無言で数度うなずき、「ありがとうございます」とお礼のお言葉をくださったのです。
正直、火葬が始まってすぐの、このタイミングで飼い主さんからお礼の言葉をもらうことは珍しく、私は少し応対に戸惑ってしまい、「はい」とだけ返事をしました。
そのとき、チラっとTさんに視線を向けたのですが、Tさんはただ無言で火葬炉を見つめておられ、目に涙を浮かべていたのです。
ブログのスペースが無くなりましたので、この後のお話は次回に紹介させていただきます。
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野村圭一
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